大正時代の日本画家である、甲斐荘楠音(かいのしょうただおと)。
明治時代、京都に生まれ、大正時代は日本画家として活動。
その後、昭和に入ると、衣食住などの日常生活を研究し、
映画や舞台の美術等に反映させる風俗考証家として
活躍した人物です。
近年、東映京都撮影所で甲斐荘楠音が携わったとされる
時代劇映画の衣装などが再発見されたのを機に、彼に関する
展覧会「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を超越する個性」
が開催されることとなりました。
2023年春には京都国立近代美術館で開催、甲斐荘楠音の
絵画から演劇・映画人としての一面を再評価したとして、
大きな話題を呼んでいます。
そんな注目の展覧会が、2023年夏・東京にやってきます。
展示の場所は東京ステーションギャラリーに決定、
会期は2023年7月1日から8月27日となっています。
今回、こちらの記事では「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、
映画を超越する個性」についての見どころや楽しみ方などを
ご紹介していきます。
甲斐荘楠音の全貌の見どころはここです!
甲斐荘楠音といえば、一般的には日本画家としての一面が
有名と言えるでしょう。
なんとなく不気味で、だけれど妖艶さがあって目が離せなく
なるような女性の絵画たちがおなじみです。
甲斐荘楠音の名前を知らなくても、ひと目彼の絵を見れば
見覚えがあると感じる人も多いはず。
2021年に、東京国立近代美術館で開催されていた
「あやしい絵展」に甲斐荘楠音の作品が登場して世間の
話題に上ったのも記憶に新しいところです。
そんな彼が大正ロマンを代表する人気画家のキャリアを捨て、
あらたに飛び込んだのは昭和の時代劇の世界でした。
チャンバラ映画の陰の立役者とも言われているそうです。
今回の展覧会「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を
超越する個性」では、今まで評価されていた日本画家である
甲斐荘楠音についてだけでなく、映画界・演劇界で活躍した
甲斐荘楠音のすがたにもスポットライトを当てています。
まさに「甲斐荘楠音の全貌」というタイトルにふさわしい
新たな試みといえるでしょう。
これまであまり明かされずにいた、知られざる甲斐荘楠音の
すがたを垣間見ることができます。
そして、今回の展覧会でいちばんの見どころといえば、
1929年(昭和4年)に描かれた絵画「春」かもしれません。
甲斐荘楠音の意欲作といわれているこの作品。
じつは長らく行方不明となっていたものなのですが、
2019年にアメリカ・ニューヨークのメトロポリタン
美術館に収蔵されました。
そんな「春」が、今回の展覧会のためにはるばる海を渡り
日本で展示されることになりました。
甲斐荘楠音が亡くなってから、日本では京都会場での
展示が初公開となったそうです。
見学の時に注目したいのは、この絵画に描かれている
明るい色の着物や飲み物、床に敷かれたじゅうたんなどの
いわば時代背景を表現する小道具たち。
このような小道具を細かく描きこむその姿勢が、画壇から
姿を消して以降、彼の映画界・演劇界での風俗考証家としての
活動に生きていたのでしょうね。
そんな名作、「春」の凱旋にぜひ注目してみてください。
甲斐荘楠音の全貌の楽しみ方!
「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を超越する個性」
では、さまざまな絵画作品のみならず、演劇や映画での
甲斐荘楠音の功績を知ることができる点が大きなポイントです。
画家として行き詰った甲斐荘楠音が、次に力を注いだのが
東映時代劇の映画界。
甲斐荘楠音が関わったとされる映画作品は200本以上にも
なるそうです。
この展覧会では、時の名優である市川右太衛門とともに
甲斐荘楠音が創作した「旗本退屈男」シリーズで使用された
衣装などが中心となって展示されています。
また、甲斐荘楠音が考証や提案を手掛けた映画のポスター
なども用意されています。
彼が描いた日本絵画との見比べができるのも、今回の
展覧会での贅沢な楽しみ方のひとつです。
1953年に製作されヴェネツィア国際映画祭にて銀獅子賞を
受賞した「雨月物語」(監督・溝口健二)は有名なところですが、
この作品の衣装にも、甲斐荘楠音が関わっていました。
彼が考案したその衣装は、アカデミー賞の衣装デザイン賞に
ノミネートされるという大きな注目を浴びました。
ふだんはフランス・パリにあるシネマテーク・フランセーズにて
保管されていますが、今回の展覧会のために取り寄せられ
東京で見ることができる貴重な機会となっています。
さまざまな植物や魚などをモチーフにした豪華絢爛な
衣装たちは、日本画家としての甲斐荘楠音のキャリアが
製作を可能にしたのかもしれません。
今回初めて一般に公開される彼の映画人・演劇人としての
一面も、日本画家時代をはじめとした複雑な甲斐荘楠音の
歴史を感じながら見学することでより一層楽しみが深く
感じられるのではないでしょうか。
元来、その画風から「あやしい画家」としてのイメージが
強い甲斐荘楠音。
観る者の首元をスッと撫でるような心地がする作品たちは
夏に鑑賞するにはピッタリかもしれません。
彼の作品が一堂に会するなかなかないこの機会、ぜひ
「甲斐荘楠音の全貌」展に足を運んでみてはいかがでしょうか。
コメント